古代の湖(9)歌枕

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納税を済ませて明細を見た家内が「復興税」という項目に注目した。大震災原発事故においては私たちは被害者のはずなのだが「やっぱり復興税は取られるんだ」と。今度は新型コロナ税を払わなければならないかも知れない。

 

八幡太郎義家(つづき)

 この歌は結論としてこうなる。「年を経し 糸の乱れの苦しさに 衣のたては ほころびにけり」

「衣のたて」とは、「衣の縦糸」を表現し、掛詞(かけことば)として「衣川の館(たて)」。衣川は平泉を流れる川。衣川の館は安倍貞任(あべさだとう)の拠点。

長い年月を経て糸の乱れが起き 衣川の館は 崩壊寸前です。ということか。

 

前九年の役。猛将太郎義家との戦いに敗れた安倍貞任の逃れゆく姿を見つけた太郎義家さんは舟なんかも沈没させてしまうほどの威力を持つ弓を構えておっしゃいました。

「安倍さん 衣の館は綻びにけり もう降参したら」と下の句を投げかけたわけだ。そしたら安倍さんが上の句を返した。「私の不徳といたすところ、知らぬ間に私の陣営は時代にそぐわなくなり、ばらばらになってしまいました。面目ねえ」。

その歌心に感じ入った太郎義家君は安倍さんを逃がし逃れさせた。

「それは失礼つかまつりました。勝敗は時の運、今ははや逃れられよ」

つまり「宋襄の仁(そうじょうのじん)」を示したわけだ。このために後でひどい目に遭っているので無益な情けと云うことになり文字通り「巣襄の仁」なのだが、大和の武士(もののふ)は教養も志も高く武士の情けも海よりも深い。

安倍さんは「武運長久お祈り申し上げます」と云って立ち去っていきます。

 

本居宣長さんも詠っているではないか。

「敷島のやまと心を人とはば 朝日ににほふ 山ざくら花」

「咲きにほふ春のさくらの花見ては 荒ぶる神もあらじとぞ思う」

まさにまさに小学唱歌八幡太郎さんです。このようにしてヒーローは誕生するのです。

「この花を見たらあんた、戦なんぞしてる暇はありませんぞ」

 

歌枕のことである。

 勿来の関も、白河の関も、安宅の関も、歌の世界での流行語であり、指し示す内容も多くの歌人が合意する決まり文句だ。

安積山も安積沼も、山の井の沼も、安達太良山磐梯山も、万葉の人々にとっては決まり文句で、私たちがポップスを歌うように、活用し歌っていたのではなかろうかと考えます。

「あさかやあまあ イエイエ あさかぬま ウオウウオウ 」てな具合にノリノリソリソリで歌っていたのではあるまいか? (お断り申し上げますが私はその方面の学者ではない)。

本居宣長新古今和歌集の研究者である義兄に対しては申し訳ないと詫びをせねばならない。  (次回予告 白河の関