せせらぎの小道:炎症と免疫(2)

仙道先生の講義の続きです。

 先ず炎症ですが、炎症は「おでき」や虫刺されのことを想像すればわかります。先ず赤くなって、局所に熱感があります。発赤、熱感、腫脹、疼痛、これを炎症の4主徴と言います。

おできはそのうち小さくなって治ってしまうこともありますが、だんだん大きくなって、重症化して、医者に切開をしてもらわなければならなくなることもあります。この炎症の増悪化がCOVID-19の重症化に関係していると考えられます。

 次に免疫の話ですが、私は免疫学者で何十年も免疫の勉強をしていますが、未だに免疫のことがよくわかりません。それほど、複雑なしくみからなっていると言うことです。免疫の定義として一番適切な言葉は「外界の異物に対するネットワーク系」という表現だと思います。脳神経計のことを認識のネットワークと言いますが、それに匹敵するものだと考えて頂けば良いと思います。

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細菌とかウイルスが外界から侵入すると、先ず、マクロファージ、顆粒球、NK細胞などがその異物を発見し攻撃します。これを自然免疫と言います。多くの場合は、自然免疫で治癒してしまいますが、防ぎきれないときには、獲得免疫にバトンタッチされ、さらに攻撃が進みます。獲得免疫には、一回であった異物を記憶して、二回目出会ったときにより強く攻撃する免疫学的記憶と呼ばれるしくみが備わっています。

自然免疫には免疫学的記憶がありません。免疫学的記憶があるかどうかが、獲得免疫と自然免疫の大きな違いです。ここでもう一つ強調しておきたいことは、自然免疫で働くマクロファージや顆粒球は炎症でも働くということです。

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なぜ老化に伴ってCOVID-19の重症化率が上昇するのか、その原因は未だ不明ですが、重症化の機序を見出す上で、重要なファクターであると思います。現時点で言えることは70歳代、80歳代の方を絶対COVID-19に罹患させてはならないということです。

 

仙道先生の話はもっと続くのですが ”重症化の機構” 抜粋 ということで終了します。仙道先生は昨年、胃がんの診断を受け、自らが育てた医学博士達の手によって、鏡視下で胃全摘術を受けられた旨。化学療法が辛いというメールを頂きました。元気な様子です。"仙ちゃん”のことだからコロナが収まる頃には全快していると思う。